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尿失禁

尿失禁について

“自分の意志とは無関係に尿が漏れる状態”のことを尿失禁と言います。
しかし、尿漏れがあったとしても、全例で治療が必要かというとそうではありません。社会的,衛生的に問題となる場合に治療を考えます。言い換えると、治療するかどうかは“本人や家族が困っているかどうか”、“治したいかどうか”などを聞きながら決定します。

尿失禁の頻度

尿失禁の頻度は、下記に示す様に、女性にとっては決してまれな病気ではありません。

・健康成人女性の4人に一人
・出産経験者の4割

尿失禁のタイプ(分類)

1腹圧性尿失禁
2切迫性尿失禁
3混合性尿失禁(腹圧性+切迫性)
4溢流性尿失禁
5機能性尿失禁
特殊なケースを除けば、女性の尿失禁は腹圧性と切迫性とその合併(混合性)がほとんどです。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみなど、お腹に力がかかった時(腹圧上昇時)に尿が漏れるタイプです。このタイプの尿漏れは、尿道に問題がある場合に起こります。 尿道の安定が悪い(尿道過可動)場合と尿道のしまりが悪い(内尿道括約筋不全)場合があります。

尿失禁イラスト

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁とは、尿意を感じて我慢できず尿が漏れてしまうタイプです。これは、自分の意志に反して膀胱が収縮し、尿が保持できないために起こります。(暴走膀胱タイプ) 具体的には、トイレに行く途中や、トイレで下着を下している間に漏れるなどという訴えが多いのですが、基本は尿意切迫感があることです。 尿意切迫感とは、“急に起こる、抑えられないような強い尿意で、我慢することが困難な場合”のことをと呼びます。 尿意切迫感を感じるきっかけとしてトイレに行きたいと思った時はもちろんですが、帰宅してドアノブに触れたとき(これをドアノブ尿失禁)、炊事、洗濯などの水仕事や手洗いなど水に触れた時(手洗い尿失禁)、水の流れる音を聞いた時や水を連想するだけでも感じる場合があります。トイレのことを意識したりするだけでも尿意切迫感を感じる場合もあります。

トイレに行きたい時

トイレに行きたい時のイラスト

水に触れた時

水に触れたときのイラスト

帰宅時ドアノブに触れた時

帰宅時ドアノブに触れた時

溢流性尿失禁と機能性尿失禁

溢流性尿失禁とは、残尿が多いため尿があふれ出す尿漏れで、原因は排出障害(尿が出にくいこと)が基礎にあります。機能性尿失禁は、認知症や行動や運動能力の低下など、尿路の問題ではなく生活環境などの問題によるものです。

尿失禁の原因

◦腹圧性尿失禁の原因⇒尿道の支持・機能の問題
腹圧性尿失禁の一番の原因は、分娩(経腟分娩)です。その他に、さまざまな原因が考えられますが、体重増加・便秘など慢性的な腹圧上昇が関係しています。

◦切迫性尿失禁の原因⇒膀胱の調節(膀胱機能・神経)の問題
切迫性尿失禁の原因は、膀胱の調節機能の問題で、これは、神経因性(頭から膀胱までの刺激の調節の障害)と非神経因性(膀胱自体の機能・調節不全)に分けられます。 しかし、原因不明の場合(これを特発性と呼びます)が最も多いと考えられています。

尿失禁の治療

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁では、その原因が全く異なるため、その治療法も異なります。

◦ 腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁の治療は、尿道を安定させることです。 具体的には、骨盤底筋運動と手術です。薬物療法もありますが、効果はあまり期待できません。 軽症であれば、骨盤底筋運動でかなり改善が期待できます。しかし、効果が自覚できるのは、2-3カ月後です。重症であれば、手術の適応となります。

◦切迫性尿失禁
切迫性尿失禁の原因は、神経の調節の問題なので、基本は薬物療法です。薬剤治療以外にも、膀胱訓練や低周波治療といった理学療法もありますが、これらは薬物療法ほどの効果は期待できません。

◦切迫性尿失禁(+頻尿・尿意切迫感などのことを過活動膀胱と呼びます)
の治療薬は数種類ありますが、緑内障(閉鎖性隅角緑内障)がある場合には使えません。また、重篤なものではありませんが、副作用が見られることがあります。主な副作用には、口渇(のどが渇く)・便秘・目の調節異常(焦点が合いにくいなど)や尿の出方が悪い(弱くなる)・尿が出ない(尿閉)などがあります。薬を服用するか、どうかは、治療効果と副作用で、個々に判断していただきます。

尿失禁手術について

尿失禁の手術は、尿道を幅約1cmの一本のテープで支える手術(中部尿道スリング手術)です。この方法では、治癒(全く尿漏れがなくなること)と改善(尿漏れは残るが、半分以下に減少)を手術成功とした場合、成功率はほぼ9割です。尿道スリング手術の長期成績は術後3年で10%程度の尿漏れの再発がみられますが、長期的にも比較的安定しています。